お使いのブラウザは古いバージョンのインターネットエクスプローラーです。レイアウトを簡略版に切り替えて対応しています。

インド洋大津波後のバンダアチェ市(インドネシア)における復興住宅の増改築状態


 2004年インド洋大津波後のバンダアチェ市およびその近郊における復興住宅の供給について、継続して調査してきたのは、国連人間居住計画がコーディネートや復興住宅供給に参画した二つのガンポン(クルラハン:区)、バンダアチェ市の郊外沿岸地区にあるデア・グルンパンおよび市街地中心部におけるプランガハンの二地区(図1)である。以下は、こうした地区における「現地再建」による復興住宅の2007年8月現在での実際の居住環境について調査結果を整理、まとめたものである。
図1:デアグルンパンとプランガハン(調査地区)

インフラストラクチャーの状況

 電気はプランガハン、デア・グルンパンどの住宅にも供給されている。上水道はどちらの地区においても整備中で、プランガハンでは調査時に工事風景が見られた。生活用水は井戸に頼っており、多くの家で見ることができた。津波前からの井戸を掘り返して使用していたり、所有していない家でも隣人の井戸を借用している。ドナーの援助で工事を行う事例も多く、デア・グルンパンでオックスファムが援助する事例が多い一方、プランガハンでの事例は1 件しか見られない。また、UN-Habitat やMuslim Aidが井戸の援助をした事例は見られなかった。飲料水は、別途購入しており、各家でボトルを取り付けるサーバーを所有している。ガスボンベは、いくつかの住宅でみられたが、多くは持ち運び可能な小型のコンロを使用して調理を行っていた。

現地再建による復興住宅の住まい方

図2:デアグルンパンの住まい方事例
 図2で見られるように、復興住宅は3mスパンの36㎡で1つのルアン・タム(居間)と2つのカマル・ディドゥール(寝室)が基本とされ調査地区においても多くの復興住宅がこの形式に則っていた。
 就寝の場は、家族構成や居住人数によってルアン・タムで就寝する事例も見られるが、カマル・ティドゥールで就寝する事例が多く、食寝分離が始めに計られている。また、カマル・ティドゥールは夫婦二人で占める事が一般的で子供が6~8歳になると、就寝を別にしている事例が多い。礼拝を行う場は、就寝する場と重なる事が多いが、空間に余裕がある場合は特別に設けられている。また、特定の空間で礼拝を行わない事例が年齢20 代から30代で見られた。
図3:ダプール(台所)の増築と位置
 住居スペースで顕著に差が見られた所は、ダプール(台所)である。増築がなされていない場合のダプールの配置の仕方は3通りに分けられる(図3)。最も単純なものは、ルアン・タムの奥に配置するケース。次に自助建設によりルアン・タムに間仕切壁を設けて、その奥をダプールとするケース。最後に居住人数が少ない場合に多く見られる事例として、奥のカマル・ティドゥールをダプールに当ててしまうケースがあった。
増築する場合、まず始めに着手されるのはダプールが多い、もしくはダプールを室内に留めたまま、テラスを作りルアン・タムのスペースを拡充するケースもあった。また、建設時のプラン変更により、カマル・ティドゥールを1室減らしたものや、供給された2つの住居を結合しているケースもあった。プランガハンでは、建設当初からのプラン変更が多く、大幅な改変は一部プランガハンで見られるのみであったのと同時に、基本平面のまま使用しているケースが多かった。特にUN-Habitat の援助による復興住宅の中で、初期に建てられたタイプは増改築をした事例が認められなかった(図4)。
図4:恒久住宅の増改築平面の類型

供給された復興住宅に関しては、ダプール増築のケースの多さから、一面で早期の供給を目指した事はあるにしても、計画の段階から考慮される問題である。実際、 再定住地の復興住宅ではルアン・タムの一部がダプールに転換されていた。また、早期に建設された住宅は施工が荒く、恒久的なシェルターとしての役目はなかった。その為、セミパーマネントと呼ばれる、半コンクリート造の住居はプランガハンで居住している事例がなく、打ち捨てられている。居住人数に即していない為に同じ復興住宅でも、居住環境に大きな差が見られた。