人間文化研究機構ネットワーク型基幹研究プロジェクト地域研究推進事業 グローバル地域研究プログラム

人間文化研究機構 グローバル地域研究プログラム2026年度全体シンポジウム
「『地域』を再考する―グローバル地域研究の新たな地平」
グローバル地域研究・総括班 関連

日時・場所

開催日時: 2026年9月5日(土)~9月6日(日)
開催場所: 国立民族学博物館インテリジェントホール(講堂)+オンライン

内容


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 2022年度に開始した人間文化研究機構グローバル地域研究プログラムは、人・モノ・情報・価値・制度等のグローバルな往還が加速する一方、移民・難民問題、地域紛争、環境危機、経済的不均衡など複合的課題が顕在化する世界において、地域を固定的かつ閉鎖的な空間単位として理解する枠組みそのものが再検討を迫られているという問題意識の下、傘下の4つの地域研究プロジェクトが緩やかに連携しつつ調査・研究を進めてきた。各プロジェクト、あるいはプロジェクト間を横断するかたちで実施されてきた特別研究班は、上記のさまざまな主体や現象が織りなす多層的な関係性に着目することによって、地域研究の新たな理論的・方法論的可能性を探究している。
 今回のシンポジウムでは、ここまで4年間の研究成果を踏まえ、改めて「地域」とは何かという地域研究の根本を問い直し、固定的な地理的空間や国民国家の境界を前提とした従来の地域概念を超え、歴史的に形成される多様な関係性の動態として地域や世界を捉える新たな視座をさぐることを目的とする。
 本シンポジウムで共有される視点は、単に「越境」や「移動」の存在を指摘することではない。むしろ、人・モノ・情報・価値・制度等が特定の歴史的経路に沿って反復的に往還し、その循環が新たな社会関係や文化秩序を形成するとともに、さらに新たな移動と接続を誘発するという動態的過程そのものに着目する点に特徴がある。こういった循環は政治的・経済 的条件に加えて、生態環境、宗教的価値観、技術革新、社会的記憶など複数の要因によって 方向づけられ、その歴史的蓄積を通じて固有のネットワークと文化的空間を形成していく。本シンポジウムではこのような循環と接続性の分析を通じて、地域を多孔的・圏域的な歴史 プロセスとして理解する理論的可能性を重視する。
 海域世界、言語文化圏、移民・難民、海民社会、国際開発協力など、本シンポジウムで扱 われる対象は多様である。しかし、それらはいずれも既存の地域区分を前提とするのではなく、交易、宗教実践、移住、外交、制度移転、文化的媒介といった具体的な実践を通じて形成される接続性の歴史を実証的に明らかにする試みと位置づけられうる。個々の報告はそれぞれ固有の地域や時代を対象としているが、相互に比較・接続することで、従来の地域概念では捉えきれない広域的な歴史的ダイナミズムが浮かび上がってくることを期待したい。報告のいくつかからは、「日本」と世界とのかかわり、現代日本の大学や研究機関の研究者が地域研究を行うことの意味といった、これまでの日本の地域研究では問われることの少なかった問題も取り上げられる。
 こうした探求は、地域研究を特定の地域に関する知識の集積から、世界を捉えるディシプリンそのものを探る知的実践へと再定位することを意味する。歴史学、人類学、言語学、文 学、政治学、開発研究など多様な学問領域の対話を通じ、本シンポジウムでは、個別事例の精密な実証研究とそれらを横断する理論的構想とを往還させ、地域を再概念化し地域研究を 再活性化する試みを継続したい。その先に展望されるのは固定した境界設定やその枠の中に とどまる知識の生産ではなく、循環と接続性によって絶えず生成され続ける世界を理解する ための新たなグローバル地域研究の理論的地平ということになるだろう。

 本シンポジウムは2026年9月5日(土)、6日(日)の2日間、国立民族学博物館で開催される(オンライン併用)。
 初日はまず、総括代表の三尾がプログラムの目的や事業の位置づけ、理論的見通しを総論として述べる。続く第1パネルでは「グローバル地中海」「環インド洋」「海域アジア・オセ アニア」「東ユーラシア」の4プロジェクトの代表が、各プロジェクトの研究の視点と成果を総括し、理論的深化を含めた今後の研究の可能性を論ずる。
 2日目は、さまざまな視点や時間軸から浮かび上がる「地域」像やその研究方法論の比較 という本プログラムの開始時点での問題意識を2つのパネルに分けて掘り下げる。
 第2パネルは、歴史をさかのぼり、かつ「地域」を俯瞰的に捉える視点に力点を置きつつ、20世紀後半に固定化・「常識」化した地域概念を相対化する議論を展開する。具体的には「言 語文化圏」や「海域世界」といった、従来の「地域」把握とは異なる着眼点や発想から生成 される世界像の可能性、また東南アジアの海民やユーラシア大陸中央部のディアスポラのように異なる歴史・生存環境を背景としつつも、「移動と接続」という特徴では共通点のある人びとがそれぞれに切り拓く世界のあり方が議論の出発点となる。
 2日目午後の第3パネルは、力点を現代に移し、「既存」の「地域」を越えて動く人・モノ・実践の動態をどのように捉えるのかという点について議論を深める。具体的にはエスニック・ネットワークや難民、モノの交易、開発現象といったさまざまな主体の移動や現象を動かし、 制約する政治・経済・環境要因が論点となる。第2パネルが俯瞰的な地域の把握が議論の中心となるのに対し、第3パネルは世界を動き、また動かしてゆくエージェンシーから「地域」を見上げて行く視点が中心となる。第3パネル後半では、グローバルな人・モノ・価値の移 動と「日本」との関わりという重要な論点も焦点となる。
 2日目の最後には各プロジェクトの代表が再度登壇して、2日間3パネルを総括する討論を行い、本プログラムの今後の可能性を検討する。「グローバル地域研究プログラム」参加者のみならず、地域研究に関心を持つ多くの研究者のご出席と議論へのご参加を期待している。

プログラム

1日目:2026年9月5日(土)14:15~17:30
開催場所:国立民族学博物館インテリジェントホール(講堂)
13:45- 参加受付
14:15-14:45 開会挨拶:三尾稔(グローバル地域研究プログラム総括代表/国立民族学博物館)
15:00-17:30 パネル1「各プロジェクトの成果と展望」
  • 15:00 西尾哲夫(国立民族学博物館、グローバル地中海地域研究プロジェクト)
  • 15:20 三尾稔(環インド洋地域研究プロジェクト)
  • 15:40 小野林太郎(国立民族学博物館、海域アジア・オセアニア研究プロジェクト)
  • 16:00 高倉浩樹(東北大学、東ユーラシア研究プロジェクト)
  • 16:20-16:35 休憩
  • 16:35 コメント 井野瀬久美恵(人間文化研究機構監事、甲南大学名誉教授)
  • 16:50-17:30 討論
2日目:2026年9月6日(日)10:00~17:15
開催場所:国立民族学博物館インテリジェントホール(講堂)
10:00-12:30 パネル2「地域」を捉える視座 / 主として歴史的な視点から
  • 10:00 近藤信彰(東京外国語大学、グローバル地中海)
  • 10:20 鈴木英明(国立民族学博物館、環インド洋)
  • 10:40 長津一史(東洋大学、海域アジア・オセアニア)
  • 11:00 櫻間瑞希(大阪大学、東ユーラシア)
  • 11:20-11:30 休憩
  • 11:30 コメント1 鵜戸聡(明治大学、グローバル地中海)
  • 11:45 コメント2 鈴木佑記(国士舘大学、海域アジア・オセアニア)
  • 12:00-12:30 討論
12:30-13:30 昼食
13:30-16:00 パネル3「地域」を生成する主体・現象 / 主として現代的な視点から
  • 13:30 河合洋尚(東京都立大学、海域アジア・オセアニア)
  • 13:50 池谷和信(国立民族学博物館、グローバル地中海)
  • 14:10 崔紗華(同志社大学、東ユーラシア)
  • 14:30 関谷雄一(東京大学、環インド洋)
  • 14:50-15:00 休憩
  • 15:00 コメント1 縄田浩志(京都大学)
  • 15:15 コメント2 川口幸大(東北大学、東ユーラシア)
  • 15:30 討論
  • 16:00 休憩
16:15-17:15 総合討論
17:15 閉会

参加方法

参加申込フォーム(一般向け)2026年7月24日(金)17:00まで
https://forms.gle/DXenRAZKN7sGcRFU6