アフリカの博物館人類学


わたしたちの身の回りには、さまざまな道具や容器、機器や装置が氾濫しています。そのうち必要なものだけを自宅に適切に配置することは、個人のライフスタイルの問題でもありますが、その人が社会から学んだ文化(知識や行動様式)の反映でもあります。家財にこのような文化的側面があるからこそ、民族誌博物館は、数々のオブジェクトを集めて世界の諸文化を示してきたのです。

しかしオブジェクトが移動するとき、あらたな地域で受容されるとともに、人びとの創意を刺激する場合があることも忘れてはなりません。ひとつのオブジェクトは異なった土地で異なる名称を獲得し、場合によっては異なる用途に用いられることもあります。ひとつのオブジェクトに関して多様な人びとがもつ多様な記憶を発掘することは、たんに「モノの社会生活」(Appadurai 1986)の履歴を明らかにするにとどまらず、人びとの交流の歴史を明らかにすることが期待されます。このような歴史にもとづいて現代社会の成りたちを考えることが、21世紀の物質文化研究に求められる新しい方法論といえるでしょう。

Appadurai, Arjun 1986 The Social Life of Things: Commodities in Cultural Perspective, Cambridge: Cambridge University Press.