人間文化研究機構ネットワーク型基幹研究プロジェクト地域研究推進事業 グローバル地域研究プログラム

グローバル状況下における知の枠組みとしてのイスラーム圏の神話をめぐる存在論的研究
代表:黒田賢治(グローバル地中海国立民族学博物館拠点/国立民族学博物館・助教)

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キーワード

イスラーム、存在論、神話、伝承、説話、呪術、魔術、妖霊、鬼

目的

本研究は、イスラーム圏の神話を共通の分析対象とし、個別の時代のグローバル状況下をめぐる知の枠組みを存在論的に再検討することを目的とする。

ムスリム(イスラーム教徒)が暮らす社会では、聖典クルアーンに示された神学的世界観に関わる狭義の神話のみならず、聖典に時に関連づけられた言説として広義の神話が生み出された。それらの神話をめぐっては、オクシデントによるオリエントの支配とキリスト教のイスラームに対する優位性の確立を背景に、ムスリムの認識枠組みの把握と解体を企図しながら20世紀前半までの東洋学において研究がなされてきた。こうした東洋学的伝統はエドワード・サイードの『オリエンタリズム』の登場以前から既に廃れて久しい一方で、広義の神話をめぐる東洋学の成果の一部はポストモダン社会のカルチャー・シーンで脱文脈的に利用され、グローバル化を通じてイスラーム圏でも消費されてきた。

しかしながら伝統的な知の体系がグローバルな資本主義に関連づいた社会的現象をめぐるローカルな知的枠組みとして顕在化することや、あるいはグローバルに流通する文化的コンテンツと結びつきながら「ローカルな文化の免疫」化といった役割を担ってきたことが知られてきた。それゆえ現代のネオリベラルなグローバル化状況下でイスラーム圏においても広義の神話の新たな展開が仮定できるだけでなく、歴史的にも当該時代のグローバル化に対するローカルな知の枠組みとしての神話の展開が仮定される。

そこでイスラーム圏の神話の動態に通時的・超地域的な検討を試みる。ただしそれらの神話が時に認識論的に非イスラーム性やシンクレティズムとして扱われてきたことを踏まえ、当事者たちの世界観のなかで捉えながらその動態を明らかにするために存在論的立場からアプローチしていく。加えて、非イスラーム圏について言えば、国内でも宗教学や哲学を背景とした神話学研究が近年でも行われており、それらを学知も積極的に取り込んでいく。

参加メンバー

黒田賢治 国立民族学博物館 グローバル地中海地域研究国立民族学博物館拠点
近藤信彰 東京外国語大学 グローバル地中海地域研究東京外国語大学拠点
奈良雅史 国立民族学博物館 東ユーラシア研究国立民族学博物館拠点
藤井千秋 京都大学 環インド洋地域研究京都大学拠点
山口匠 東洋大学 グローバル地中海地域研究東洋大学拠点
木村武史 筑波大学 人文学系・教授
黒岩高 武蔵大学 人文学部・教授
塩野崎信也 上智大学 総合グローバル学部・准教授
塩野崎信也 龍谷大学 文学部・准教授
竹原新 大阪大学 外国語学部・教授
二宮文子 青山学院大学 文学部・教授
吉岡乾 国立民族学博物館 人類基礎理論研究部・准教授

研究活動