驚異と怪異

超常認識と自然観をめぐる比較心性史の構築

科学研究費補助金 基盤研究(A) JP18H03573
[2018-04 – 2023-03]

近世以前、ヨーロッパや中東においては、人魚、一角獣といった不可思議だが実在するかもしれない生物や現象は、「驚異」として自然誌の知識の一部とされた。また、東アジアにおいては、奇怪な現象や異様な生物・物体の説明として「怪異」という概念が作りあげられてきた。本研究は、自然界の直観的理解から逸脱した「異」なるものをめぐる人間の心理と想像力の働きをこの「驚異」と「怪異」をキーワードに、比較心性史的な視点から考察する。
自然界のどのような現象が「驚異」や「怪異」という超常的なものとして認識され、どのような言説や視覚表象物として表れたのか、その背景にはどのような自然観があるのか、文明圏同士の知識体系の間にどのような接点があるのかといった点に注目し、ユーラシアにおける自然界と想像界の相関関係の歴史的変遷を、学際的・多元的視点から究明する。


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驚異と怪異――想像界の比較研究

国立民族学博物館 共同研究
[2015-10 – 2019-03]

「驚異」marvelous や「怪異」uncannyは、現代における自然界には存在しえない現象を描いた幻想文学、いわゆるファンタジーの部類に入るとみなされる。近代的な理性の発展とともに、科学的に証明のできない「超常現象」や「未確認生物」はオカルトの範疇に閉じ込められてきた。しかし近世以前、ヨーロッパや中東においては、犬頭人、一角獣といった不可思議ではあるがこの世のどこかに実際に存在するかもしれない「驚異」は、空想として否定されるべきではない自然誌の知識の一部として語られた。また、東アジアにおいては、実際に体験された奇怪な現象や異様な物体を説明しようとする心の動きが、「怪異」を生み出した。 本研究会では「驚異」と「怪異」をキーワードに、異境・異界をめぐる人間の心理と想像力の働き、言説と視覚表象物の関係、心象地理の変遷などを比較検討する。


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驚異譚にみる文化交流の諸相-中東・ヨーロッパを中心に-

国立民族学博物館 共同研究
[2010-10 – 2014-3]

本研究が対象とする「驚異譚」とは、ラテン語でmirabilia、アラビア語・ペルシア語でajāʾibと呼ばれる、辺境・異界・太古の怪異な事物や生き物についての言説である。未知の世界の摩訶不思議を語るこのようなエピソードは、東西の歴史書、博物誌・地誌、物語、旅行記・見聞記などに登場するが、これらの多くは古代世界から中世・近世の中東およびヨーロッパに継承され、様々な文化圏で共有されてきた。

本共同研究は中東およびヨーロッパの文学・歴史の専門家によって構成されており、これらが協力して各時代・地域の「驚異譚」を比較し、伝播の過程、世界観の相違、文化交流のダイナミズムなどを次の三つの主要軸を中心として解明してゆく。


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