大学共同利用法人 人間文化研究機構 国立民族学博物館 科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(A)<br>北米アラスカ・北西海岸地域における先住民文化の生成と現状、未来に関する比較研究(2019-2023)

研究メンバーと活動紹介

岸上伸啓 KISHIGAMI Nobuhiro
国立民族学博物館・教授、副館長・情報管理施設長(併任)、総合研究大学院大学・教授(併任)[2022年4月1日より]
人間文化研究機構・理事、国立民族学博物館・教授(併任)[2020年3月31日まで]
博士(文学)
これまでの研究
1980年代半ばからカナダ・イヌイット社会において狩猟漁労活動や社会組織、社会・文化変化、水産資源の利用・管理・流通について現地調査を行ってきました。1990年頃からはカナダ・イヌイット研究に加え、モントリオール在住の都市イヌイットの生活、カムチャツカ半島のコリヤークの文化、北西海岸先住民クワクワカワクゥの文化、アラスカ・イヌピアットの捕鯨文化について現地調査に基づく研究してきました。極北地域での調査経験は、35年以上になります。
本プロジェクトでの研究
今回の科研プロジェクトでは、北アメリカ大陸のアラスカ南部からカナダ西海岸、米国ワシントン州沿岸にかけての沿岸地域に住む北西海岸先住民の社会・文化の歴史、現状、未来について研究します。とくに、ハイダ民族やクワクワカワクゥ民族らの食料資源の獲得、利用、流通・分配、社会組織、儀礼、民族芸術を研究したいと考えます。また、アラスカ先住民イヌピアットの捕鯨文化についても研究したいと考えます。
近藤祉秋 KONDO Shiaki
神戸大学大学院国際文化学研究科・講師
博士(文学)
これまでの研究
博士課程での研究では、内陸アラスカ・クスコクィム川上流域のニコライ村で長期フィールドワークをおこない、人間と動物の関係、狩猟・漁撈の文化、キリスト教化の影響などについて宗教人類学の観点から調査しました。最近、「先住民と情報化する社会の関わり」という共同研究を始め、デジタル人類学的な観点からアラスカ先住民社会におけるSNS利用にも関心をもっています。
本プロジェクトでの研究
本プロジェクトでは、ニコライ村に住む人々がカリブーやドールシープを狩るために利用してきた伝統的な猟場があるアラスカ山脈の麓でおこなわれる狩猟ガイド業について民族誌調査をおこないたいと考えています。また、アラスカ南西部で信仰される正教の布教史についても短期調査と文献渉猟を実施できればと思います。
生田博子 IKUTA Hiroko
九州大学留学生センター・准教授
博士号(英国アバディーン大学・社会人類学)、修士号(米国アラスカ大学・人類学)
これまでの研究
米国アラスカ州に約20年在住し、博士論文の調査は、ロシアに最も近い米国領とされるセントローレンス島とアラスカ最北端の村ウトゥピアグビックで2年間暮らし、彼らの舞踊、先住民言語、環境との関わり、狩猟社会と開発、アイデンティティーなどについて考察した。ダートマス大学極地研究所時代は、この島における地球温暖化の影響と、滅びゆくエスキモー語と地球温暖化における文化変容の関係についての研究を行った。その後、アラスカ州政府研究機関に勤務し、社会科学者として、アラスカに住む野生動物、魚類、鳥類のマネジメント、それを狩猟・採集する人々や資源開発の影響などを調査、州政府代表としてアラスカ先住民政府や米国連邦政府との交渉、アラスカ州の野生動物に関する法律や条例の制定に関する資料作成等を担当した。私のチームは、主に米国連邦政府、アラスカ州政府が要求する、石油や金鉱など大規模な資源開発による環境や人々への影響に関する調査を行った。
本プロジェクトでの研究
今回の科研プロジェクトでは、米国アラスカ最北端の村ウトゥピアグビック市、米露国境にあるセントローレンス島、南西アラスカのY-Kデルタと呼ばれる地域で、石油等の地下資源開発とその開発の環境、先住民社会、先住民文化への諸影響、開発との共生に関する研究をします。
立川陽仁 TACHIKAWA Akihito
三重大学・教授
博士(社会人類学)
これまでの研究
1992年、バンクーバーの人類学博物館で北西海岸先住民のアートを見て以来、北西海岸の先住民文化と社会について関心をもち、研究をつづけています。トーテムポール研究からはじまり、ポトラッチ研究を経て、2000年にはバンクーバー島のキャンベルリバーを拠点に12か月の現地調査を実施し、先住民漁師と商業的サケ漁の関係について研究をし、学位をとりました。それ以後は、先住民と経済活動の関係を引き続き研究する傍ら、先住民社会の資本主義化、リーダーシップ、歓待などのテーマなども扱っています。
本プロジェクトでの研究
科研のプロジェクトでは、引き続き北西海岸、とくにクワクワカワクゥ社会を中心に、漁撈や漁業操業などの経済活動について研究をつづける一方、それを生かしつつ、漁撈への気候変動の影響を分析し、将来的な展望を見据えたいと思います。また、新たに先住民がはじめた事業と、それらの事業が成功・失敗する要因、SNSの発達がこれら事業にもたらす影響などについても研究したいと考えています。
手塚薫 TEZUKA Kaoru
北海学園大学・教授
博士(文学)
これまでの研究
1980年代半ばからアラスカ、カナダの極北圏において狩猟採集民族の土地・資源利用形態にフォーカスした考古学や民族考古学調査を行ってきました。1990年頃からは北米やロシアの研究者らと共に千島列島における縄文文化期からアイヌ文化期にかけての人の移住と島嶼環境への適応について現地での考古学調査に基づく研究を行ってきました。また、アラスカ州コディアック島における先住民の商業サケ漁についても研究成果を公表しています。
本プロジェクトでの研究
今回の科研プロジェクトでは、北米北西沿岸地域に居住している住民と津波など自然災害とのかかわり、および自然災害からの復興過程と将来の世代への伝承方法について研究を実施します。また、千島列島、北海道、東北の自然災害を体験した孤立した小規模コミュニティとの比較研究も進めます。