Hirochika NAKAMAKI

主なプロジェクト(完了済)

科学研究費補助金による研究

経営文化の日英比較−宗教と博物館を中心に

A Comparative Study of Association and Associations in Britain and Japan: Religion and Museum
O Estudo Comparativo de Cultura Administrativa entre Japão e Inglaterra: Religião e Museu

研究目的
本研究の目的は、イギリスと日本において、固有の経営伝統の上に構築された経営文化がどのように異なっているかについて、おもに宗教的側面と企業博物館に焦点をあてながら、比較文化論的に明らかにするものである。
産業革命をいちはやく達成し、近代の経営文化の源流のひとつとなったイギリスをとりあげ、伝統的な共同体の意識に支えられたイギリスの経営文化と、共同体的な「日本的経営」とを比較する。それによって、資本や技術のめまぐるしい変化にともなう先鋭的な経営文化の変遷ではなく、伝統ある歴史の流れをふまえた変わりにくい経営文化の現代的諸相を、人類学的手法であきらかにしたいと考える。調査地としては、工場制度の発達したバーミンガム、伝統的陶器産業の近代的工業化に成功したストーク・オン・トレント、工業化からは取り残されたが情報化によって脚光をあびているコッツウォルズを選んだ。
宗教については、産業革命を導いた鉄生産技術の開発に大きな貢献をしたクエーカーにとくに着目し、クエーカーの同胞意識が経営文化にどのような影響を与え、会社のヒエラルキー構造と共同体意識との調和をいかにはかっているかを明らかにする。企業博物館をとりあげるのは、世俗的とみなされがちな仕事や事業の「聖化」をみるためである。日本では神道も仏教もビジネスに神聖な価値を付与するのに一定の役割を果たしてきたが、本研究はイギリスにおける宗教とビジネスの関係を従来の宗教・経済の分離論ではない視点から見なおすことを目的としている。仕事や事業は単に経済的目的のためになされるのではなく、宗教的理想や理想的生活の実現のためにもおこなわれることを析出し、そこにはたらいている価値観や意味づけを問うことで経営文化の解明に寄与したい。

研究組織
【研究代表者】
中牧弘允(国立民族学博物館・民族文化研究部)
【研究分担者】
澤野雅彦(九州国際大学・経済学部)、塩路有子(阪南大学)、住原則也( 天理大学・国際文化学部)、日置弘一郎(京都大学・経済学部)、廣山謙介(甲南大学・経営学部)、三井 泉(帝塚山大学・経営情報学部)
【海外共同研究者】
Joy Hendry (Oxford Brookes University), William Kelly (SOAS, University of London), Louella Matsunaga(Oxford Brookes University), Mitchell Sedgwick(Oxford Brookes University)

刊行物
廣山謙介「チェシャーの平釜製塩業 −ライオン製塩場の場合」『甲南経営研究』43巻2号
廣山謙介「企業博物館の歴史−技術伝承の視点から」中牧弘允・日置弘一郎編『企業博物館の経営人類学』東方出版、2003
澤野雅彦「ヨーロッパの自動車博物館」中牧弘允・日置弘一郎編『企業博物館の経営人類学』東方出版、2003
経営文化の日英比較−宗教と博物館を中心に−』平成13年度−平成15年度科学研究費補助金研究成果報告書