権力の生成と変容から見たアンデス文明の再構築

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パコパンパ遺跡発掘調査

プロジェクト概要

本研究の目的は、50年以上続く日本のアンデス文明研究の成果を踏襲しながらも、権力という新たな分析視点と分野横断的な手法をミクロ・レベルの考古学調査に導入し、文明初期における複雑社会(complex society)の成立過程(メソ・レベル)を追究するばかりでなく、人類史における文明形成というマクロな課題に取り組むことにある。従来のアンデス文明論は、文明の最終段階であるインカ帝国の研究、しかも古文書研究より復元した国家像を過去に適用するという単純な視点で語られることが多く、また長年にわたる日本の調査においても主眼は詳細なデータ提示にあった。本研究では、膨大に蓄積された日本の研究を再解釈するとともに、新たにデータを充実させ、文明論を再構築することをめざす。

具体的には、アンデス文明のなかでも、文明初期にあたる形成期(前3000年~紀元前後)に焦点を合わせ、ペルー北高地に位置するパコパンパ祭祀遺跡を調査し、遺構、出土遺物の分析を、考古学のみならず、自然科学を含む分野横断的体制の下で進める(ミクロ・レベル)。その際、権力生成の特徴として捉えるため、経済、軍事、イデオロギーという権力資源間の関係性に注目する。さらに、同時期の他の祭祀遺跡のデータと比較することで文明初期の多様な社会状況を把握する(メソ・レベル)。ここから得られた文明形成論を、中米および旧大陸の文明形成過程と比較し、相対化する作業も併せて行う(マクロ・レベル)。