考古学的調査においては、コロナ禍により遅れていた現地調査を開始することができた点は大きい。プロジェクト開始時に想定していた調査データの収集や分析に多少の遅れが生じていることは事実であるが、今後の調査でなんとか挽回していきたい。また昨年の調査の際に、サンプル抽出作業を行い、人骨、獣骨などの科学分析もようやく軌道に乗りつつある。今後は、日本に保管されているサンプルの再分析なども視野に入れ研究を充実させたい。
一方で、昨年の調査で重要な墓を発見することができた点も大きな収穫であった。本プロジェクト自体は、形成期以降(前1年以降)の社会を対象としているが、形成期中期(前1200~前700年)という、これまでの調査では得られなかった埋葬の情報は、社会的差異が明確になる形成期後期(前700~前400年)の社会が過去をどのように認識していたかを分析する際に、重要な視点を提供することは疑いようがない。これは、研究対象の拡大にもつながるが、アンデス文明史の研究自体をみたときには、むしろ喜ぶべき事態といえる。
今後は、新たな研究活動によってプロジェクトの充実をはかるとともに、これらの成果を国内外の学界で積極的に発信し、研究の遅れを補っていくこと予定である。
2024.2.17. 13:30-17:30 および 2.18. 9:00-12:00 2023年度共同研究会 会場:東亜大学 ⇒プログラムpdf[83KB]
コロナ禍で中断していた日本人研究者による現地調査を3年ぶりに再開し、7月下旬より一ヶ月半ほどペルー北高地カハマルカ州チョタ郡ケロコト郡に位置するラ・カピーヤ遺跡で発掘調査を実施した。2021年度に発見した防御用の溝構造が等高線に沿って延びることを確認し、インカ直前(後1300~1500年頃)の社会のコンフリクト状況が明らかになった。この調査の過程で、形成期中期(前1000年~前700年)にさかのぼる基壇と部屋が検出され、層位的にはそれより古い墓も発見された。
この墓は、深さ約1.5mで、上部には大量の礫が詰め込まれ、その下には1トン以上の大石が置かれていた。大石の下からは、エクアドル産の巻き貝であるストロンブスが20点見つかり、その上に成人男性の遺体が安置されていた。ストロンブス貝および遺体には、貝や青緑色の石製の装飾品が捧げられていた。これまでに形成期中期にさかのぼる貴人墓は発見されておらず、権力者の誕生時期が大幅にさかのぼる可能性が高い。この発見は、国内外で報道されたほか、英国の雑誌World Archaeology Magazine誌において8ページにおよぶ異例の特集記事が掲載され、世界的にも注目された。さらにエクアドルで開催された国際会議の基調講演でもこの発見を紹介した。
2023.2.13. 10:00~15:00 2022年度共同研究会 オンラインで開催 ⇒プログラムpdf[76KB]
コロナ禍で日本人研究者によるペルーでの調査は断念したが、11月より一ヶ月ほどペルー北高地カハマルカ州チョタ郡ケロコト郡に位置するラ・カピーヤ遺跡の発掘調査を海外共同研究者によって実施した。具体的には防御用の溝構造が複数検出され、インカ直前(後1300~1500年頃)の社会のコンフリクト状況を示すデータが得られた。この場合、防御される区域の狭さから、祭祀空間の防御であった可能性が高い。ラ・カピーヤ遺跡では、形成期(前1000年~前700年)にさかのぼる祭祀遺構が検出されていることから、今後は、聖なる空間としての継続的利用がどのような仕組みで可能となったのかを追究していきたい。
2021.12.18. 11:00~12:30 2021年度共同研究会 オンラインで開催 ⇒プログラムpdf[140KB]
本年度は、コロナ禍でペルーでの調査は断念した。
2020.12.27. 9:00~11:00 2020年度第2回研究会 オンラインで開催 ⇒プログラムpdf[74KB]
2020.8.28. 13:30~17:00 2020年度第1回研究会 オンラインで開催 ⇒プログラムpdf[127KB]