私の初航海はとても長く、大荒れの航行となった。特別扱いされることもなく、どんな天候のもとでも、与えられた仕事は全てこなさなくてはならなかった。 船 の帆は新しく、この時代、ダブル・トップスルはなかった。凍りついて木の板のように固くなった新品の帆を何とか操作しようとしたり、強風が吹く中で帆をた たもうとしたりして、何時間も仲間たちとトップスル・ヤードの上で過ごしたことをしっかりと覚えている。ロンドンからコークまでの航海で、乗組員たちが海 にげんなりしたのは確かだと言える。クイーンズタウンで、当時、英国の保護領だったコルフへ向かう連隊を乗せた。コルフからマルタまでは他の連隊を移送 し、ここでものすごく壮大な光景に遭遇した。地中海艦隊がダンダス提督の提督旗を掲げたブリタニア号のもとに全集結して、本国からの指令を待っていたの だ。私たちが滞在している間に、提督はダーダネルスで連隊を乗せるよう指示を受けた。この後事態はクリミア戦争開戦になだれ込んで行く。この時代、装甲船 はまだなかったと思うが、ものすごい数の木製英国戦艦が港に一同に会し、壁のようになった光景は今も忘れることはできない。