私たちの西海岸の旅は、何といっても最後の夜が最悪だった。荒れ狂う風が強い土砂降りの雨と一緒 になって小さなテントを吹き飛ばし、夜明けはまだ遠いというのに、私たちは情けないほどずぶぬれになってしまった。しかし、残念ながら、この思い出深い旅 の全貌をお話しする余裕はない。私たち夫婦の人生の始まりとしてふさわしい旅だったと思うが、一面だけから見れば、確かに楽しい遠足というわけではなかっ た。しかし、行きも帰りも、私にとっては生涯で一番素晴らしい旅だったと言える。ワイカト・ヘッズのカヌーの上で過ごした時間を除けば、楽しいことばかり だった。道中、マオリ人たちは絶えずとても親切だった。実際、温かいもてなしを受けられなかったのは、古く打ち捨てられたようなマオリ人の小屋に泊まり、 ノミの大群の攻撃を受けて追い出された時だけだった。このときは容赦なく降りしきる雨のせいで前に進むこともできず、やむを得ず丘の上で雨に背を向けて、 震えながら立っていなければならなかった。ともかく、私たちはついに帰って来た。オネハンガで、私たちはこの上なく愛情に満ちた歓迎を受けた。ニュージー ランドに到着して以来、おじ、おば、いとこたちは、父であり、母であり、兄弟や姉妹にも等しい存在だった。そして、数年前に優しく迎え入れた1人の船乗り が、彼らが生涯をかけて取り組んでいる仕事に就くこととなり、古い友人でもある同僚の娘を一生の仕事の伴侶として選んだことを、とても喜んでくれた。