私は真っ先に駆けつけ、ものすごく驚いた。恐ろしい ことに、船はブリストル海峡の ランディ島の西岸に衝突しかけていたのだ。幸い、大きな引き潮だったので、船は危険から逃れることができた。しかし、ここまでぎりぎりの状態に陥った船は 他にないだろう。島には立派な灯台があるにもかかわらず、船は大波の中、時速約6ノットの速さで人気のない崖をめがけて進んでいたのだ。数分遅ければ、船 は岩に激突し、即座に海の上でばらばらになっていただろう。恐らく乗組員の全員が溺れるか、船の残骸にぶつかって死んでいたに違いない。船には、一生を海 の上で過ごしている男たちも乗っていたが、この朝の出来事に衝撃を受け、縁起でもないので、ブリストル行きの船に乗る仕事は2度と引き受けないと言ってい た。
私は上陸できるのが嬉しかった。給料を受け取るとすぐに、私は故郷を目指し、北に向かって出発した。ところが、私は英国でその まま暮らすことはできず、父をとても悲しませることになった。私には色々な職業につく選択肢が与えられた。父の事務所をはじめとした、父の影響力を直に感 じるような職場である。しかし、私はどこを選ぶのも嫌だと感じた。多くの人たちが、何故、私が再び海外に行きたいと望むのか不思議に思ったが、この時の私 には満足のいくような説明をすることはできなかった。しかし、今の私には、神の手に導かれたということがはっきりと分かる。私は知らなかったが、神は私に 使命を与え、私を見えない手で導いてくださっていた。私はニュージーランドへ行こうと決めた。ただ単に英国から一番遠い場所だったからだ。もし、中央アフ リカに行くことができたなら、すぐにそこへ行こうと考えていただろう。父も最後には同意してくれた。ただし、水夫としてではなく、乗客として行くようにと いう条件をつけて。