National Museum of Ethnology, Osaka, Japan
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Scan of first page of Brown's autobiography.
Scan of cover page of Brown's autobiography.

ジョージ・ブラウン自叙伝

George Brown, D.D. Pioneer-Missionary and Explorer

目次

幼少期 / 父―有能な人格者/ 父―篤い信仰心/ 学生の頃/ 危険な仕事 / 海へ 1 / 海へ 2 / 海へ 3 / 新大陸への航海 / 第一歩 / 五大湖 / 帰国 / 危機一髪 / ニュージーランドへの航海 / オークランド / 天職を求めて / 宣教師としての適性 / ふさわしい伴侶 / 泥まみれのハネムーン / 最悪の一夜 / 悲劇の宣教師 / シドニーからサモアへ


第一歩<五大湖 > 帰国

 モントリオールを後にした私は五大湖を目指して移動し、多くの時間を貨物用汽船トナカイ号の甲板で過ごした。ぼろぼろの船だったので、これ以上ご立派な 船 名は付けられなかったのだろう。私は、甲板の積荷の一部だった釘の樽を並べた上で、幾晩も眠ったことをはっきりと覚えている。釘が突き出している樽の位置 を変えるために、何回も起こされたものだった。しかし、トナカイ号の航海は順調に進んだ。セント・ローレンス川を上り、運河を抜け、オンタリオ湖とエリー 湖を越えて、ついにオンタリオ・ウェストのニュー・ロンドンから少し離れた場所にある港に到着した。ニュー・ロンドンまでたどりついた私は親戚のD氏夫妻 を訪ね、温かく迎えられた。D夫人は私の母の一番上の姉であった。夫妻はその土地にしばらく暮らしており、その紹介で、私は大型雑貨店に職を得ることがで きた。当時のニュー・ロンドンはたいへん小さな町で、周辺は、ほとんど手つかずの自然が残っていた。店の主な客である農夫たちは、冬の間でなければ、買い 入れた品を農場まで運ぶことができなかった。当時、舗装された道はほとんどなく、雪で地面が高くなった時にだけ、農夫たちは品を持ち帰ることができたので ある。ここで滞在している間、私は一度、とても危ない状況に陥り、ずっと記憶に残るほど貴重な教訓を得た。私が務めていた店には、エドウィン・Sという若 い男がいて、私よりかなり長い間そこで働いていた。しかし、私の方がちょっとばかり知識が豊富だったようで、エドウィンが自分にこそふさわしいと信じてい た仕事を、私がすぐに横取りする形となってしまった。これだけでなく、エドウィンは他にも色々な理由で私が気に入らなかった。当然、未熟な若い男たちにあ りがちなように、私たちは喧嘩ばかりしていた。エドウィンは力では私よりかなり強かったが、脅し文句は私の方が上だった。ある日、エドウィンが殴りかかっ てきたことにとても腹を立てた私は、激昂して大きなナイフをつかみ、殺してやるとすごんだ。この事件の数日後、朝食の前に、私たちは町から6マイルほど離 れた淋しい場所へ鳩を撃ちに出かけた。私たちは一丁しか銃を持っておらず、まずエドウィンが撃ってから、私が撃つことになった。私は受け取った銃を構え、 鳩の群れに狙いを定めたが、獲物が遠すぎると判断して、銃を肘のところまで下げた。その時、指が滑って撃鉄が押し下げられ、弾が飛び出してしまった。弾 は、エドウィンの頭の横ぎりぎりをかすめた。もし彼が死んでいたら、私はお縄になっていただろう。私が彼の仕事を奪ったこと、私たちがいつも喧嘩をしてい たこと、たった数日前に彼を殺してやると脅していたこと、そして子どもっぽい恋愛問題が私たちの間の空気を険悪にしていたことは、誰もが知っている。エド ウィンの死は事故だと言ったところで、誰が信じてくれるというのか。私たちは2人とも取り乱してしまい、その日はこれ以上鳩を撃つことは止めにした。


幼少期 / 父―有能な人格者/ 父―篤い信仰心/ 学生の頃/ 危険な仕事 / 海へ 1 / 海へ 2 / 海へ 3 / 新大陸への航海 / 第一歩 / 五大湖 / 帰国 / 危機一髪 / ニュージーランドへの航海 / オークランド / 天職を求めて / 宣教師としての適性 / ふさわしい伴侶 / 泥まみれのハネムーン / 最悪の一夜 / 悲劇の宣教師 / シドニーからサモアへ /
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