National Museum of Ethnology, Osaka, Japan
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Scan of first page of Brown's autobiography.
Scan of cover page of Brown's autobiography.

ジョージ・ブラウン自叙伝

George Brown, D.D. Pioneer-Missionary and Explorer

目次

幼少期 / 父―有能な人格者/ 父―篤い信仰心/ 学生の頃/ 危険な仕事 / 海へ 1 / 海へ 2 / 海へ 3 / 新大陸への航海 / 第一歩 / 五大湖 / 帰国 / 危機一髪 / ニュージーランドへの航海 / オークランド / 天職を求めて / 宣教師としての適性 / ふさわしい伴侶 / 泥まみれのハネムーン / 最悪の一夜 / 悲劇の宣教師 / シドニーからサモアへ


  ふさわしい伴侶<泥まみれのハネムーン>最悪の一夜

  私たちの新婚旅行が色々な意味でこの当時の標準とは異なっていたことは想像に難くないだろう。出 発前夜、2頭の馬を事前にワインガロア湾を泳いで渡らせた後、翌朝、私たち一行はカヌーで湾を渡った。馬には鞍が付けられ、妻の友人たちは、これから先何 年も会えなくなる妻に慌ただしく別れを告げた。たくさんの祈りの言葉と祝福を浴びて、オークランドへの長い陸路の旅が始まった。旅には、妻の弟と2人のマ オリ人が同行した。1頭の馬に妻が乗り、もう1頭は山盛りの荷や箱などを運んだ。確かにどの荷物も必要なものばかりだったのだろうが、出発前に大半が海の 中に沈んでいれば良かったのにと、何度も願わずにはいられなかった。  

 私は、時々、この旅のことだけで1冊の本が書けるだろうと考えたものだ。私たちは海岸線に沿って続くブッシュ の中の小さく狭い道を通り、巨大な沼地に突き当たるとはるばる遠回りをし、数日前に牛の大群が通った密林を抜けた。このとんでもない道の所々には、膝の上 までつかるほどのぬかるみがあった。特に、道を横切る巨大な植物の根がある場所が酷かった。泥に隠れて根が全く見えないことが多かったため、つまずいた り、転んだりして、両手両膝が深い泥のぬかるみにはまってしまうことがよくあった。旅行中は6晩とも、アマの茂みの風下で野宿したり、現地人の汚い家に泊 まったりして夜を過ごした。アマの茂みの方が、現地人の家よりずっときれいで快適な場所だったことは、わざわざ述べるまでもないだろう。ワイカト・ヘッズ に到着すると、私はカヌーを手に入れ、広くて深い入り江を、1頭の馬を泳がせながら進んだ。初めは全て順調だったが、半分ほど来たところで、馬がそれ以上 泳がなくなってしまった。馬が溺れそうになったので、私は馬の頭をカヌーに乗せ、1度か2度、泳ぐように促してみた。しかし、馬は泳ぐより溺れる方がまし だと考えている様子だ。そこで、私は、もう1度馬の頭を引っ張ってカヌーに乗せ、カヌーを引いていた現地人が、馬も一緒に引っ張ることとなった。この馬 は、その頃の価格にして100ポンドほどする高価な雌馬だった。あまりに長く引っ張らなくてはならなかったので、その間、もし大金持ちだったら引っ張るの をやめさせても構わなかったのにとか、安物の馬だったら良かったのになどと考えてしまった。やっとのことで岸が見えたので、私は馬を放すように言った。馬 は足が水底に着くまで静かに沈んでから、もう少し長生きしたいと考えたらしく、岸まで泳いで行った。岸に着いた馬は、とても満足げな様子で私たちをじっと 見つめていた。私たちはカヌーで反対岸に戻ったが、もう1頭の馬はそこに残しておくことにした。そこで、私たち全員が入り江を渡った後は、荷物を1頭の馬 に載せ、残りの道のりは、全員が歩くことにした。

 

幼少期 / 父―有能な人格者/ 父―篤い信仰心/ 学生の頃/ 危険な仕事 / 海へ 1 / 海へ 2 / 海へ 3 / 新大陸への航海 / 第一歩 / 五大湖 / 帰国 / 危機一髪 / ニュージーランドへの航海 / オークランド / 天職を求めて / 宣教師としての適性 / ふさわしい伴侶 / 泥まみれのハネムーン / 最悪の一夜 / 悲劇の宣教師 / シドニーからサモアへ /
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