マルタからジブラルタルまでまた違う連隊を移送し、その後、北米へと向かう第26カメロニアン連隊を乗せた。順調に航海は進み、全員を無事ケベックに上 陸 させた。彼らが下船する日に起こったある出来事が、今思えば私の運命を完全に変えることになった。私たちは低層の貨物室の昇降口を開けて、彼らと一緒に下 ろす荷物を取り出す準備をしていた。私は中甲板から上って、灯りを持ってくるように指示されたが、私が戻ってくるまでの間にはしごをつないでいた中甲板の 止め具が外され、はしごは昇降口に立てかけられた状態になっていた。そのために、私が足を掛けた瞬間にはしごの底が滑って貨物室へ落ちてしまい、私も道連 れになったのである。幸いなことに、私は中甲板の昇降口の縁材に落ちたため、死を免れることができた。しかし、足を2カ所骨折し、すぐに陸の病院へと運ば れた。船は私を乗せずに出発した。気の毒なことに、L船長をはじめとする全員は、次の航海で行方不明となってしまったらしい。もしケベックでの事故がなけ れば、私も行方不明者の1人であったことは間違いなかっただろう。私は病院に何週間も入院した。ここで受けた治療と看護については、感謝とともにいつでも 思い出すことができる。また、私は、若い医学生の一人に、忘れることのできないほどの強い印象を与えたことも覚えている。私は骨を引っ張り固定しておく器 具を足に装着していた。外科医が時々この器具を締めるのだが、もちろん、これがたまらなく痛かった。ある日のこと、医師たちが足を診察に来て、順調に回復 していることを確認した上で部屋を出て行った。その後、一人の学生が自分のためにちょっと練習しようと考えたらしく、器具をもう1段階締めようと鍵を手に した。医師が指示したわけでもないのに、私がこの行為に承服できるわけはなかった。そこで反対の意思を足を蹴り出すことで表したのだった。足は若い学生の 腹部を直撃し、その勢いで学生は部屋の反対側にあるベッドのあたりまで飛ばされた。学生は顔面を蒼白にし、職員の後を追って部屋から出て行った。その後、 この学生ができるだけ私のベッドを避けていることに気が付いた。もちろん、2度と私に拷問じみた真似をしようとはしなかった！
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